変性性脊髄症(DM)のおはなし
変性性脊髄症とは進行性の脊髄疾患で痛みがないのが特徴です。多くは飼い主さんがペットの足を引きずるのに気が付いて来院されます。最近ではコーギー犬に多く報告されています。
変性性脊髄症の特徴・症状
どの犬種でも起こり得るがコーギー、G・シェパード、バーニーズなどに発生が多く報告されている。 | ||
初めは後ろ足を引きずる、つま先がひっくり返る、段差を踏み外すなどの症状がでる。 | ||
10歳前後での発生が多い。 | 痛みはなくゆっくりと進行する。 | 原因、治療法ははっきりわかっていない。 |
変性性脊髄症の診断
変性性脊髄症は生前の正確な診断法がまだ確立されていません。他の疾患を除外し犬種や症状などから総合的に判断します。
- 神経学的検査で神経の麻痺の程度を調べます。
- レントゲン検査で椎間板ヘルニアや骨折、椎間板脊椎炎、腫瘍などの異常がないか調べます。
- MRI等で脊髄神経の圧迫病変や腫瘍性疾患などの他の異常がないか調べます。
(変性性脊髄症はMRIで病変が検出されません。神経に他の疾患がないか除外するために行います。) - 最近では遺伝子検査でDMの素因を持っているか診断できるようになりました。しかしこの検査で陽性が出てもいつ発症するかなどのはっきりした事はわかりませんし、この検査のみで現在の症状がDMによるものか断定できるものではありません。
変性性脊髄症の治療・予後
変性性脊髄症の治療法は現段階ではありません。進行をできるだけ遅らせるために散歩や足の屈伸運動を行って筋力を落とさないようにします。また足を引きずることで足先に擦り傷ができることがありますのでそれらのケアも必要になります。後ろ足の機能が落ちてきた場合、犬用の車いすをお勧めすることもあります。
変性性脊髄症はゆっくりと進行していきます。初めは片方の後ろ足を引きずる仕草が見られ、徐々に両方の後ろ足の麻痺が出てふらつくようになってきます。足がクロスしたり、うさぎ跳びの歩様が出るかもしれません。進行が進むと後ろ足が立てなくなり排便・排尿がうまくできなくなります。さらに進行が進むと前足にも麻痺が出てきます。いずれ立てなくなり寝たきりになるかもしれません。その後も進行が進むと呼吸がうまくできなくなって最終的に死に至ります。発症から亡くなるまで平均3年ほどといわれています。
治療が困難な病気なのでいかに生活の質を上げるかが治療のポイントになってきます。後半は介護が必要になってきますので困ったことや心配なことがあれば遠慮なくご相談下さい。