副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)のおはなし
この病気は腎臓の近くにある副腎という臓器から分泌されるコルチゾールというホルモンが過剰になってしまう病気です。比較的高齢になってから発症することが多いですが1歳の若齢の子にも報告されています。
1、副腎皮質機能亢進症の病態
副腎皮質からコルチゾールというホルモンが分泌されるまでにはいくつかの段階を踏んで行われます。
- 第1段階:
脳にある視床下部という部分から副腎皮質刺激ホルモン 放出ホルモン(ACTH放出ホルモン)が分泌されます。 - 第2段階:
ACTH放出ホルモンが脳にある下垂体に作用し副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を放出します。 - 第3段階:
ACTHが副腎皮質に作用し副腎皮質からコルチゾールが分泌されます。
第2段階に異常が起こり(主に下垂体腫瘍が原因)コルチゾールが過剰になる場合が多く、8割がこちらの病態です。残りの2割が第3段階に異常が起こり(主に副腎腫瘍が原因)第2段階と区別するためにクッシング病と言われることがあります。
2、副腎皮質機能亢進症の症状
水を大量に飲む | 大量におしっこをする | 食欲が旺盛 | 被毛が薄くなってきた |
お腹が太鼓腹になってきた | 皮膚が黒ずみざらざらする | 運動を嫌がる | 肝臓が大きい |
皮膚や膀胱炎などの感染症が治りづらく再発しやすい | 血液検査でALPが異常に高い |
3、副腎皮質機能亢進症の診断
- ACTH刺激試験:
ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を投与し投与前後のコルチゾール値がどう変化するかで判断します。場合によってはデキサメサゾン抑制試験を行う事もあります。 - レントゲン検査:肝臓の大きさ、その他の臓器の異常や副腎腫瘍がないか等を調べます。
- エコー検査:各臓器の内部構造や副腎の大きさなどを検査します。
- 血液検査:肝臓や腎臓病、糖尿病などの検査を行います。リンパ球低下がないかもチェックします。
- CT,MRI検査:明らかな下垂体腫瘍や副腎腫瘍が疑われる場合は大学病院等でさらに詳しく検査を行います。
4、副腎皮質機能亢進症の治療
- 下垂体性の場合:明らかに下垂体が腫瘍化し神経症状などがある場合は手術や放射線治療が必要になります。それ以外の場合は内服でコルチゾールの分泌を調節する方法を選択するのが一般的です。
- 副腎腫瘍の場合:手術で片方の副腎を摘出するのが第一選択となります。手術後、副腎皮質機能低下症になることが多いのでその後はコルチゾールの値を見ながらホルモン補充を行うことがあります。
5、治療の予後
下垂体の腫大を伴わない場合は比較的予後はよく内科治療で長期コントロールできることが多いと言われています。しかし、下垂体の腫大を伴う場合は神経症状などの合併症を伴うため予後が悪い事があります。副腎腫瘍の場合は手術が選択されるが手術後の予後は悪いことが多いと言われています。