猫伝染性腹膜炎(FIP)のおはなし
ネコ伝染性腹膜炎とは軽い下痢を起こすコロナウイルスが何らかの突然変異を起こして病原性の高いコロナウイルス(FIPウイルス)になりFIPを起こすといわれています。コロナウイルスは糞便に排泄され、他のネコが口や鼻から吸い込むことで容易に感染していきます。そのため多頭飼いの場合、集団でコロナウイルスを保有している場合があります。コロナウイルス自体は飼い猫の約半数が感染しているといわれていますがコロナウイルスの感染イコールFIPの感染ではありませんし、コロナウイルス抗体価の上昇があるからといってFIPに感染しているというわけではありません。
1、FIPの特徴
- 1才以下、10歳以上のネコに多く見られます。
- 純血種でブリーダーなどから購入した子や多頭飼いの子に多い傾向にあります。
- 急性型(ウエットタイプ)は腹水等が溜まり、慢性型(ドライタイプ)は肉芽腫や神経症状などを起こします。
- FIPウイルス自体は猫同士で感染しないといわれています。
2、症状
発熱 | 食欲低下 | 体重減少 | 沈うつ |
胸水・腹水の貯留 | 炎症性肉芽腫やリンパ節炎 | 肝腫大や腎腫大 | 眼の炎症 |
神経症状(ふらつきや運動失調、痙攣など) | その他(嘔吐、下痢、黄疸、呼吸困難など様々な症状) | ||
血液検査で軽い貧血、高グロブリン血症(ポリクロナルガンモパチー)、リンパ球数低下など。 |
3、診断
FIPウイルスとコロナウイルスを区別することは出来ないためFIPと確定診断を下すことは非常に難しいです。そのため様々な検査を組み合わせたり時間をおいて数回検査を行うことが必要になってきます。また検査の結果と症状などから総合的に判断する必要があります。
- コロナウイルス抗体価陽性または2週間間隔のペア血清にて抗体価の上昇を確認します。ただし弱毒性のコロナウイルス感染や免疫機能の衰えなどで十分に抗体が産生できない場合があるため、陽性でも確定は出来ないし陰性でも否定はできません。そのため他の症状と合わせて総合的に判断します。
- 腹腔内腫瘍がある場合、病理組織検査で肉芽腫性炎症が見られます。
- 腹水や胸水がある場合はそれらの中にコロナウイルスがいるか遺伝子検査を行います。抗体価に比べると診断確率は高いがウイルスがいなくてもFIPが否定できません。
4、治療
FIPは治療法がありません。そのためFIPを発症してしまうと死亡してしまう確率が非常に高く、ウエットタイプでは数日~数週間で亡くなるケースがあります。ドライタイプではインターフェロンや免疫抑制量のプレドニゾロンの投与で症状が改善する場合もありますが大半の子は数週間から数カ月で亡くなってしまう可能性があります。