免疫介在性溶血性貧血(IMHA)のおはなし
免疫介在性溶血性貧血とは免疫成分の一つである抗体が赤血球を破壊し貧血を起こしてしまう病気です。
犬では自己免疫によるものが多く猫では白血病ウイルスなどが原因でおこることが知られています。重篤な急性のIMHAは死亡率が高く(30~80%)血栓症やDIC(播種性血管内凝固)などを併発してしまうこともあります。また赤血球以外にも血小板や白血球に抗体ができ同時に減少することもありますので注意が必要です。
1、IMHAの症状
元気・食欲の低下 | 可視粘膜蒼白 | 黄疸 |
濃い色の尿 | 頻脈・呼吸速拍 | その他(吐き気・多飲など) |
2、IMHAの特徴
コッカースパニエル、プードル、マルチーズ、セッターなどに多い | 中年齢での発生が多い |
猫では白血病ウイルスやヘモプラズマ(ヘモバルトネラ)などの感染でなることが多い |
3、IMHAの診断
1)問診
溶血を起こす薬物や玉ねぎ・ニンニクなどの摂取がないかチェックします。また腫瘍や遺伝によるものや、火傷・打撲などの機械的損傷、出血を疑わせる所見があるかどうかをお聞きします。
2)血液検査
貧血や黄疸の度合いを調べたり、溶血を起こすその他の原因や内臓の異常がないが検査します。また、骨髄で血液の再生が行われているか、溶血を示す所見がないかも検査します。猫ではエイズや白血病、ヘモプラズマ等の感染も検査します。
3)クームステスト
赤血球膜に抗赤血球抗体があるかどうかを調べます。これがあると免疫によって赤血球が壊される指標になります。
4)レントゲン・エコー検査
体内に腫瘍や出血、その他の異常がないか検査します。
4、IMHAの治療
基本は免疫を抑制し赤血球の破壊を抑える治療を行います。高用量のステロイド剤を貧血が改善した後も2週間程度まで続け徐々に減量していきます。しかし数日使用しても溶血が治まらない場合はヒト免疫グロブリンの点滴を検討します(アレルギー反応が出やすいことや費用が高額なのが難点です)。
犬の場合は特に血栓症やDICを併発しやすいため抗血栓療法も同時に開始します。
貧血が重度で生命の危険にかかわる場合は輸血も検討しますがIMHAの場合、輸血した血液もどんどん破壊されさらなる状態の悪化を招く場合もあります。
貧血が改善した後は約半年かけて徐々にステロイド剤を減量していきます。
しかし長期間にわたり高用量を使用するため副作用も出やすく肝機能の異常や感染症(風邪や膀胱炎、皮ふ病など)、副腎皮質機能亢進症、糖尿病、胃腸炎などにかかりやすくなります。そのためこれらの症状が懸念される場合は他の免疫抑制剤も検討することがあります。また薬を減らしていく最中や休薬した後に再発することもあり、再発すると初回よりが薬に対する反応が悪く治療が難しくなる傾向にあります。最低でも1ヵ月に1回の血液検査を行い、少しでも再発が疑われるときは投薬量を増やしたり治療を再開する必要があります。
ご不明な点がある場合は獣医師にご相談ください。