犬の膵外分泌不全のおはなし
「先生、うちの子よく食べるのにどんどん痩せてきてるんです。なんか心配で…」ミックス犬のサラちゃんはまだ4才。3か月前の体重に比べると20%ほど体重が減ってしまっています。ウンチもゆるいことが多くなんとなく白っぽいとのこと。この急激な体重減少は内臓の異常が疑われます。飼い主さんと相談して詳しい検査を行うことにしました。
膵外分泌不全とは
膵臓には内分泌機能(血糖値を調節するインスリンなどのホルモンを分泌)と外分泌機能(食べた物を消化・分解する消化酵素を分泌)の働きがあり、そのうちの外分泌の働きが悪くなった状態を膵外分泌不全と言います。この病気になると食べた物をうまく消化吸収できないため食べているのに痩せてくるなどの症状が出てきます。
膵外分泌不全の原因
- 遺伝性:ジャーマンシェパードで報告されています。
- 特発性:膵臓の腺房細胞が萎縮することで起こるといわれています。すべての犬種に発生します。
膵外分泌不全の症状
異常な食欲 | 急激な体重減少 | 白っぽい便(脂肪便) |
食糞・食べ物でないものを食べる | 常にお腹をすかせている | 若い子(1-5歳)に多い |
膵外分泌不全の診断
・TLI(血清中トリプシン様免疫活性物質)測定
:膵臓から分泌されるトリプシノーゲンを反映する検査で正常値以下では膵外分泌が十分に行われていないことを示唆する検査です。
・一般血液検査、レントゲン検査、エコー検査、便検査
:膵外分泌以外の基礎疾患がないか検査します。膵外分泌不全ではALTの上昇や低コレステロールなどが観察されることがあります。また膵臓の障害が強い場合、糖尿病を併発することがあります。
膵外分泌不全の治療
- 膵酵素剤の投与:不足している消化酵素を補い消化を助けます。一生涯の投与が必要になる場合もあります。
- 抗菌剤の投与:膵外分泌不全の子には腸内細菌が乱れてしまう小腸内細菌過剰増殖症(SIBO)という病気を併発する場合があります。その場合は消化酵素だけでは下痢がコントロールできないことが多いので抗菌剤の投与が必要になります。
- ビタミン剤の投与:腸内細菌バランスの乱れや膵外分泌の異常でビタミン不足(特にVitB12)になることがありますので必要に応じて投与を行います。