犬の歯周病のおはなし
歯石が著しく蓄積した歯
「先生、うちの子の口がこの頃くさくって…顔をなめてくれるのはうれしいんだけど気になるんです。」
唇をめくってみると歯が見えないくらい歯石がびっしりこびりついています。歯肉も赤くずいぶん後退しています。「においの原因はこの歯石と歯肉炎ですね。歯ブラシはされていますか?」「いいえ、うちの子歯ブラシをすごく嫌がって…」。ワンちゃんの歯周病は比較的よくみられる疾患です。多くは歯石の付着による歯肉炎ですが、ひどくなると歯根膿瘍やあごの骨が溶けてしまうこともあります。
1.歯周病の原因
歯石の沈着による細菌感染 (乳歯残存や歯列異常、柔らかい食べ物ばかり食べていると歯石がつきやすくなる) |
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腫瘍・口腔内異物 | 腎不全・糖尿病などの疾患 | その他 |
2.歯周病の症状
口の痛み | 口がにおう | 口を気にする |
よだれが多い | 硬い物が食べられなくなる | 出血 |
痩せてくる | 顔がはれる | その他 |
3.歯周病の診断
- 視診
口の中を詳しく調べ歯石の沈着や異物・腫瘍の有無を確認する。痛みのため抵抗されたり、口の奥で見る事が出来ない場所に異常がある場合は鎮静下での診察が必要になることもあります。 - レントゲン検査
腫瘍の可能性や歯根膿瘍がある場合、治療の反応が悪い場合は口のレントゲンを撮り、骨が溶けていないか確認する必要があります。 - 組織検査
腫瘍が疑われる場合鎮静下で組織を採取し病理検査を行います。
4.歯周病の治療 (それぞれの原因に合わせた治療を行います。)
- 歯石除去、ぐらついている歯の抜歯
口の中を清潔に保ち、悪い歯を除去することで炎症を和らげます。歯石が重度に沈着すると歯肉が後退して歯根が露出してしまい抜歯しなくてはいけなくなります。
<歯石除去前><歯石除去後>
- 抗生剤、消炎鎮痛剤の内服
口の中の細菌を抑え、痛みと炎症を抑えます。 - 腫瘍・異物の除去
- 適切な食事管理
質の高いバランスのとれた総合栄養食を与えます。痛みが強い場合はドライフードより缶詰の方が適しています。
5.歯周病の予防
- 歯みがき
一番効果的です。毎日でなくても週に1回やるだけで全然違います。方法は指にガーゼを巻いたり、ヘッドの小さい柔らかい歯ブラシを使い、それらを水につけただけで歯の表面を磨きます。
ワンちゃん専用のデンタル製品もありますのでご相談ください。 - その他
歯垢をつきづらくする歯みがきスプレーやガム、噛んで歯ブラシ効果を期待する食事やデンタルコットンなどがあります。