犬と猫の乳腺腫瘍のおはなし
「先生、昨日うちの子のおっぱいにコリコリしたしこりを見つけたんです。気になったので見てもらえますか?」
触ってみると大きさが1cmぐらいの固いしこりがあります。また飼い主さんは気づいていないようですが違う場所にも小さな粒状のしこりがいくつかあることがわかりました。
乳腺腫瘍はその名の通りおっぱいにできる腫瘍です。年齢が高いメスの子にできることが多いですがオスでも発生することもあります。また多発することもあり、犬と猫で悪性の比率も随分違います。
1.乳腺腫瘍の特徴
避妊手術をしていないメスに多い (2回目の発情以前の避妊手術で発生率が減少する) |
10歳以上での発生が多い |
犬の場合、悪性の割合は50% | 小型犬、シャム猫に多い |
猫の場合、悪性の割合は90% | 多発している場合その腫瘍ごとに悪性か良性かちがうことがある |
2.乳腺腫瘍の診断
- 触診:腫瘍の大きさ、場所、数、体表リンパ節の腫脹などを確認します。
- 細胞診:細い針を刺して細胞を採取します。乳腺腫瘍以外の診断できる腫瘍でないかを確認するのが目的です。この検査だけでは乳腺腫瘍の良性・悪性の判断を確実に行うことはできません。
- レントゲン検査・エコー検査:肺等への転移の有無や体内のリンパ節の腫脹などを確認します。
- 血液検査:貧血やカルシウムなどの電解質異常がないか確認します。
- 組織生検:腫瘍がある程度の大きさがあれば鉛筆の芯ほどの針を刺して組織を採取し病理検査を行い、良性・悪性の判断をすることが可能です。しかし腫瘍が小さい場合や確実な判断を希望の場合は手術にて治療を兼ねた腫瘍摘出を行って病理検査を行います。
3.乳腺腫瘍の治療
- 外科手術:悪性と判断された場合、治療を兼ねた組織生検の場合、良性でも手術したほうがよいと判断した場合などは手術を行います。犬・猫の乳腺はつながっているため明らかに悪性の場合はいくつかの乳腺をまとめてとるほうが再発を防ぐのに有効です。(詳しくは獣医師にご相談ください)
- 抗がん剤:手術を行い、悪性と判断された後は再発・転移を防ぐため抗がん剤を定期的に投与することがあります。進行度合いなどで使用するかどうかを判断します。
4.乳腺腫瘍の予後
初診時の進行度や悪性度によってずいぶん違います。どの病気もそうですが早期発見・早期治療が完治できるかどうか左右します。しこりを見つけたら早めに病院にご相談ください。