進行性網膜萎縮(PRA)のおはなし
プードルのココちゃんが夕方の散歩で物にぶつかるとのことで来院しました。「昼間はそんなことないからたまたまかもしれないけど・・・」と飼い主さんも首をかしげています。確かに明るい診察室の中では飼い主さんの顔も眼で追うしパッと見たところおかしいところは見当たりません。
そこで詳しい目の検査を行うことにしました。
進行性網膜萎縮とは
目の奥にある網膜という部分が徐々に悪くなって少しずつ目が見えなくなり、いずれ失明してしまう病気です。多くは原因不明の遺伝性疾患で6歳前後から発症することが多いですが、はやい子だと1歳以下から夜盲症のような症状がみられてきます。
進行性網膜萎縮の症状
・暗い場所で物にぶつかる |
・暗くなると動きが鈍くなる |
・階段の昇り降りをしなくなったり嫌がる | ・足を踏み外す |
・おもちゃを追いかけなくなった | ・ご飯のお皿にたどりつけない |
進行性網膜萎縮になりやすい犬種
・ミニチュアダックス | ・プードル | ・シーズー | ・ヨークシャーテリア |
・A・コッカー スパニエル |
・ミニチュア シュナウザー |
・チワワ | ・パピヨン |
進行性網膜萎縮の診断
- 視覚検査:光に反応するか、物を眼で追うことができるか、物にぶつからずに歩くことができるかなど視覚の検査を行います。
- 眼底検査:暗い部屋で特殊なレンズを使い目の奥にある網膜の様子を調べます。対光反射がしっかり残っている場合は散瞳処置を行います。
- 網膜電位図の測定:眼底の異常がないのに夜盲症のような症状がある場合は眼科専門医で網膜電位図の検査が必要になる場合があります。
進行性網膜萎縮の治療
残念ながら現在の獣医療ではこの病気の特効薬や手術などはありません。しかし、ビタミンEやアスタキサンチンを含むサプリメントが網膜組織の酸化・変性を遅らせるといわれているためそれらを含むサプリメントの投与を早期からおすすめしています。 またこの病気の子は白内障を起こしやすい事も知られています。
ココちゃんは詳しい検査の結果、網膜の萎縮がずいぶん進行した状態であることがわかりました。ワンちゃんは視覚以外にも鋭い嗅覚や聴覚があり、環境に非常に適合しやすいため目が見えずらくなっていても飼い主さんにはなかなか気付かれないことがあります。日頃からワンちゃんの行動をしっかり把握し少しでも視覚におかしいところがあれば病院にご相談ください。